エンジン始動不良 NZE121 カローラ
どのような症状?
エンジン始動不良とのことでお客様よりお電話を頂き、現地で詳しい症状を伺いました('ω')ノ
- 数日前よりエンジンがかかりにくかった。
- 何度かセルを回してるとエンジンは始動する。
- 走行時は加速に違和感はなく、アイドリングも普通の状態。
- セルモーター自体はしっかりと回っている。
とのことです。
ちなみに自分がお車をお借りした際はエンジンが始動しませんでした。
操作方法も間違えているわけではないようで、再現も可能な状況です。
なんとかエンジンを始動させるとエンジン自体の吹け上がりやアイドリングもすぐにわかる違和感はなく、走行状態にも異常はありません。
メーター等の警告灯も点灯しておらず、一つずつ突詰めていこうと思います。
エンジン燃焼の三要素
エンジンの燃焼に必要な要素は大きく分けて3つです('ω')
- 良い混合気
- 良い火花
- 良い圧縮
いずれか一つが欠けてもエンジンは機能しない為、まずはこの3つの要素をベースに問題を割り出してみようと思います。
良い混合気
エンジンが吸い込む適した空気量に対して適したガソリン量を混ぜた混合気が燃焼には必要です。
空気が多すぎても燃料が多すぎても調子は悪くなり、しっかりと燃焼も行えません。
排気ガス中のCO(一酸化炭素)やHC(炭化水素)という有害な排気ガスを排出したり、アイドリングや走行状態に異常が発生したりします。
これらの混合比率は理論空燃比に基づいて各種センサーが計測しています。
燃料が多く排気ガス濃度の状態が悪くなりそうであればO2センサーがコンピューターに燃料噴射量を変えるように指示し、空気の吸い込み量はエアフローセンサーやプレッシャーセンサーが計測してコンピューターに教えています。
その計測値に基づいて『良い混合気』を作っています。
良い火花
エンジンに燃焼を促すには空気とガソリンの混ざった混合気に着火する必要があります。
着火するには火花が必要で、その役割を担っている部品には『スパークプラグ』や『ダイレクトイグニッションコイル』があります。
しっかりと強い火花が発生しなければ燃焼しないので、エンジンの状態は非常に不安定となり、力不足を感じたりアイドリング時に車体がブルブルと振動して今にもエンストしそうになります。
O2センサーの波形が0V付近を示している場合は吸い込む空気量が多かったり、火花が発生せず燃焼が行われないことで混合気がそのまま排気に流れてしまってるケースがあります。
着火するにしても、適切なタイミングで着火を行う必要があり、エンジンの状態に合わせて制御しています。
アイドリング時はややゆっくり目に着火信号をコンピューターに送り、高回転時は早めの着火信号を送るよう制御されおり、エンジンの回転速度に合わせて制御されています。
それらの制御はクランクやカムに取り付けられている『カムポジションセンサー』や『クランクポジションセンサー』により行われています。
良い圧縮
良い混合気や良い火花があっても『良い圧縮』が無ければエンジンは力強い燃焼、爆発が行えません。
ガソリンに点火しても燃え広がりますが爆発はしないように、しっかりと混合気をエンジン内部で圧縮しないと爆発力は得られません。
その爆発力でエンジンは力強い馬力やトルクを発生させています。
圧縮が不足する要因としてはエンジン内部の機械的な損傷が多く、オイル管理が悪かったりオーバーヒートをしていたり、本来の状態ではないケースをよく目にします。
センサー類の不具合ではない機械的な損傷は、基本的には調子が良くなったり悪くなったりと変動せず、常時調子が悪い状態となります。
カローラの故障診断
診断機では特に故障コードを拾うことなく、『異常なし』となりました。
事前に伺った話通りセルモーターも元気よく回り、バッテリーの劣化も疑いの線から外れます。
燃料はしっかりと送られているのか?ポンプの劣化は?とも考えましたが、簡易的な走行チェックでも加速は悪くなくアイドリングも安定しています。また、エンジンを始動⇒走行チェック⇒エンジンを停止⇒間髪入れずに再始動を試みてもセルモーターは元気に回るけども初爆すらない状態です。これで一旦燃料ポンプ、燃圧不足も疑いの線から外します。
走行時はほとんど違和感はなく問題ない走行が可能なことから、メカニカルな故障も一旦、考えないようにしました。
①良い混合気
③良い圧縮
は一旦無視し、②良い火花について診断してみます。
スパークプラグの状態
スパークプラグの状態はというと、、、、摩耗は多少見受けられるものの、それ以上に随分とカスっぽい汚れが付着していました。
この状況でしっかりとスパークプラグが火花を飛ばしているか点検すると、
①番シリンダー・・・火花なし
②番シリンダー・・・火花なし
③番シリンダー・・・火花なし
④番シリンダー・・・火花なし
という結果でした。
確率論的にはスパークプラグが4本同時に不具合を出したりダイレクトイグニッションコイルが4本同時に壊れたりは考えづらい為、点火信号が送られていないのでは?と考えてみます。
ちなみにこのカローラは該当していませんが、過去にNZE121は『クランクポジションセンサー』にリコールも発生していました。
それであれば始めにクランクポジションセンサーからチェックしてみます。
クランクポジションセンサー
クランクポジションセンサーは文字通りクランクシャフトがどの位置にいるかを割り出すセンサーになります。
内部にマグネットが入っており、クランクシャフトに取り付けられているピックアップをマグネットセンサーが磁力の変化で位置を割り出しています。
新品のクランクポジションセンサーとの比較ですが、一目瞭然、汚れ具合が全然違いますね。本当であればオシロスコープで波形を確認したいところですが、、、、
同時にカムポジションセンサーも交換します。
こちらも汚れは具合はかなり違います。
とは言え、汚れているから交換の必要な部品という事ではなく、しっかり機能していれば汚れはあまり関係ないのですが念のため同時に交換します。
その後、コンピューター診断機を接続して、故障コードの有無の再確認をし、エンジンの始動テスト('ω')ノ
なんと、、、、エンジン始動しません。
そして診断機が接続ならない、、、、。コンピューターにアクセスできない、、、、
嫌な予感がします(;・∀・)
新たな局面へ
さて、コンピューターに診断機がアクセスできない件ですが、大きく分けて2つのパターンが考えられます('ω')
①エンジンECU本体の不具合
②配線関係の不具合
ということで、まずは火花が飛ばない現象とコンピューターアクセスできない現象から、クランクポジションセンサー関係の配線の断線や接触不良を先に検証したいと思います。※ECU本体の電源とアースは確認済み
配線図をチェックすると『17-D』と『16-D』、『18-D』がコンピューターに接続される端子のようです。
で、端子がどこにあるかを調べます。
『D』は『C62』という形状のコネクターのようで、場所をチェック。
オシロスコープがないので『16』、『17』、『18』の配線をチェックするも断線はないようです。
コネクターの接続も配線も問題はありません。
となると、疑わしいのはコンピューター本体になりそうです。
エンジンECU交換へ
エンジンECUを交換してみたところ、通常通り診断機を接続しても問題なく通信が可能となりました。
エンジンの始動も様々なシチュエーションで試しましたが問題なく一発始動です(;^ω^)
今回はちょっと遠回りした感じがします、、、情けないです。
リコールのあったエンジン、かつ症状はスパークが発生しない=クランクポジションセンサーと判断したところが情けないです( ;∀;)
エンジンの始動不良時に最初からデーターモニターでクランキング回数を確認すべきだったんです。
良い経験になりました、、、( ;∀;)